《番犬女》は俺のもの
第18章 おちゃらけプリンスの正体
───…
「ねぇねぇ…久藤さん」
「どうかしたか?」
それはある日の、美術の時間。
「ハルクくんが久藤さんを描いてる」
「…ほっとけ(汗)」
その日の課題はデッサンだった。
近くの生徒の横顔をデッサンするということで、ほとんどのものが隣に座った人間をモデルにしているのだが…
ある男子生徒が、明らかに遠くの生徒をモデルに黙々と取り組んでいた。
それに気付いた女生徒が茜に教えてあげる。
“ あんなとこから私を描いてるのか?あいつ視力いいんだな…っ ”
どーでもいいところに感心してしまう。
男子は男子を
女子は女子をモデルにする
それが暗黙の了解なのが日本だが…あの男には通じないらしかった。