《番犬女》は俺のもの
第18章 おちゃらけプリンスの正体
「──…アカネの絵は、独特だね!」
「…(ブチッ)」
堂々と茜のデッサンを覗きこんで、首を傾けながらハルクが明るく言ってのけた。
「ハルク…ッ!!」
同時にクラスの男子たちの顔からいっきに血の気がひいた──。
“ それだけは、それだけは…っ ”
“ スルーしろよぉ!バカ野郎ー! ”
「独特?──私の絵がか?」
「うん!実にunique…流石だね」
──茜の苦手分野、美術。
他の科目では優秀な彼女も、こればかりは昔からどうにもならない。
独特…なんて優しい言い方では足りない。
ただ下手なのだ。
周りの生徒はずっとそれに気づいていた。彼女自身も──。
「…なら言わしてもらうけどな」
「──ん?」
振り返った茜の目が鋭い。
「お前のデッサンはでたらめだ。私の目はそんなに大きくないし、鼻も高すぎる。こんなに長い睫毛をぶら下げてる覚えもない バサバサと鬱陶しいに決まっているからな。それになんだこの唇は 膨らみすぎだ 私のはもっと…──」
ペラペラ ペラペラ
「……でた、ぁ」
「久藤さんのマシンガントーク…」
普段はクールな彼女の舌が
ある瞬間に狂ったように動き出す
それは番犬がキレた時のシルシだった。
──…