《番犬女》は俺のもの
第19章 警戒
顔を固定せずに目高を合わせたのが彼の敗因。
「いっ、た‥」
初めて会ったあの頭突きと同じ痛みを零は再び味わうことに。
「…よし、脱出」
痛みに震えている零を横に転がして、茜は彼の下から這い出た。
キスの嵐を受けたばかりの唇を軽く拭いながら
立ち上がった彼女の顔は少し赤い。
「不機嫌になったかと思えば…急にスイッチいれやがって…っ」
「──…だって可愛いから」
「理由になっていない!」
こんなところで襲われるところだった。よりにもよって自分の家で。
「…ふぅ」
危機脱出の茜は大きく溜め息をつくと、落ち着きを取り戻したところで
…ふと疑問を持った。
「だが、篠田と転校生に接点があったのは知らなかったな。…いつの間に喧嘩してたんだよ」
「…喧嘩?してないよあんなのと」
「そうなのか?なら転校生をそこまで…、──…ああ、なんか鬱陶しいなこの呼び方」
転校生、転校生
取り敢えずそう呼ぶようになっていたが、このように話題にあがるとこの呼び名にも違和感がでてくる。
だが不思議なことに、いや、本当に自分で理由がわからないのだが、《ハルク》と呼ぶのはどうもしっくりこないのだ。
他に呼び名は──?
何かいいのがあるだろうか。
「俺は格下クンって呼んでるけど」
「…いじめっ子かお前(汗)」
男は普通に苗字で呼び捨てといきたいところ、外国人ではそれもできない。