《番犬女》は俺のもの
第19章 警戒
“ 逃げられた? ”
ハルクが乗り込んだのであろう、その車を零は目で追う。
大きな通りを右に曲がり
車は横の路地に入ってしまう。
さすがに車には追い付けないとわかっているが取り敢えず追いかけておこう
零はそう決めて脱力ぎみにまた走り出した。
「…ハァ、…ハァ」
入った路地は分かれ道が多く、これでは見つかりっこない。
骨折り損かと
零は僅かに乱れた息を整えながら来た道を引き返そうとする。
「──…」
後ろに振り返った零
そして、彼は眉をひそめた──。
……そういうことか
「奇遇だね、こんな場所で会うなんてサ」
「…奇遇? へぇ、…やってくれるね格下くん」
いつの間にか彼の後ろには
回り込んでいたハルクがいたのだ。