《番犬女》は俺のもの
第19章 警戒
数分のうちに、車の往来が激しい交差点に二人はいた。
歩道の信号が点滅を始め──
ハルクが駆け足で渡りきる。
当然間に合わなかった零は、道路を挟んで立ち止まった。
「めんどくさい…」
遠のくターゲットの後ろ姿。
信号が変わったら、駆け足で追いかけないと見失ってしまうだろう。
車道の信号が黄色になった
もうすぐ変わるか……
......
「──…?」
その時、対向車線からきた一台の黒い高級車が、ちょうどハルクを隠すように歩道に寄って止まった。
大きな車だ。
零の位置からではハルクの姿が確認できない。
“ まさか── ”
信号が青になり走り出した時には遅かった。
再び動いた車の影、そこにいた筈のハルクの姿は消えさり、歩道からは人の姿がなくなっていた。