《番犬女》は俺のもの
第20章 暴かれる
むこうはむこうで、自分達から始める気は無いようで。
零が向かってくるか…逃げ出すか…
見極めるように視線をそらさなかった。
そんな状況で、先にしびれを切らしたのは…
ニュッ
「──…ねぇ」
スーツ男でも零でもなく、ハルクだった。
目線が合わさるちょうどその交点に、ハルクの顔が下からにゅっと伸びてきた。
「にらめっこ続けられても面白くないんだけど」
一瞬でも自分の存在を忘れられたような気がして、不愉快そうなハルクは両方をいさめる。
「警戒するのはいいことだけど、…キミがそれほど臆病者だったとは知らなかったな」
「……!」
「…青崎の体育館倉庫にのりこんできた男と、同一だとは思えないね」
「……なんだっけそれ」
ハルクに言われて零が記憶をたどってゆく。
ああ、茜さんが誘拐されたと思ったときの…
そんなこともあったっけ。
骨のない相手すぎてほとんど覚えていないけれど。