《番犬女》は俺のもの
第21章 秘め事
「…ハァ、それは嘘じゃないだろうな」
「うん」
「──…」
「……?」
シャツの襟を捻りあげていた手の力をゆるめたものの、茜は零を離さなかった。
まだ話すことがあるだろう
茜の目はそう言っている。
「…どしたの?」
「お前があっさり答えたのが妙に納得できない」
「──…『さっさと全て話せ』って言ったの茜さんだよね?」
「確かに言った」
どこまでが冗談でどこからが本当なのか、もはや検討もつかないけれど
仮に零の言葉を信じるならば、どうしても腑に落ちないことが今の彼女にあった。
「──…何故、隠してきた」
「聞かれなかったから」
「……」
違う、篠田はまだ誤魔化そうとしている。
「隠してきた…そこに何か事情があるなら、無理に聞き出すようなことはしないけどな」
ハルクのこともあって
嫌でも敏感になる自分がそこにいた。