《番犬女》は俺のもの
第21章 秘め事
プツ ン.. . .
茜の額から何かがキレた音が──
「ふざけるのもいい加減に…」
並みの驚きではなかったぶん
いつまでもヘラヘラとしたやつの態度が我慢ならない。
彼女は零のシャツに掴みかかっていた。
「はぐらかすのはもうやめろ!お前が変態星からきたエイリアンだろうが 天才発明家に作られたアンドロイドだろうがこうなったらどうでもいい、誤魔化さずにさっさと全て──ここで私に話せよ!」
「…っ」
「どこまでも…得たいが知れない…っ」
どこまでも掴めない──
「──…!」
茜の気迫に圧される零。
掴みかかってくる彼女を目を丸くして見下ろす。
クールな茜がこんな風に声を張り上げたのは久しぶりだ。しかも、自分のために。
「ごめんね茜さん。怒らすつもりはなかったんだ」
「……」
「──…少しからかっただけだ、茜さんの答えはほとんど正解だよ」
「ほとんど…?」
「俺はハーフなんだ。6年前まで、イギリスに住んでた…俺の母国に」
母国
零が口にしたその言葉には、どこか切ない響きが含まれていたのだった。