《番犬女》は俺のもの
第24章 クリスマスを君と…
引き返す茜の歩き方には、いつもの切れ味がない。
そんな後ろ姿を梗子は見つめていた。
曲がり角で見えなくなる──
茜の背中
「……」
「…番犬は消えたか」
門の前でひとり立つ梗子が横に顔を向けると、制服を着た青年がこちらを見ていた。
「どうしてここにいるの、ハルクくん」
「…たまたま通りすがっただけのように見える?」
彼を見た梗子の顔から笑顔が消えた。
彼とは図書室で少し話したけれど…喧嘩になる直前で別れたようなもの。
印象の悪い相手だったから。
今日のハルクはスーツ姿のガードマンを引き連れてはいなくて、ひとりで梗子に近づいてきた。
学校から…下校する二人の後をつけてきてしまった。意識する前に足が動いていただけで、ハルク自身にもここにいる理由がよくわからない。
“ 花崎キョウコ…”
図書室でスッキリしない別れをしたからか。
ハルクの関心が珍しく、茜以外に動いていた。
「──…少し、寄りますか?」
「……!」
「わざわざ訪ねてきてくれたのですし…、どうぞ」
───…