《番犬女》は俺のもの
第24章 クリスマスを君と…
中央に螺旋階段がある玄関ホール。
間仕切りの壁がないそこからは、左手にダイニングを、右手にリビングルームを見ることができた。
梗子とハルクが靴を脱いでいると、ダイニングの奥からエプロンを着た老婆が駆け寄ってきた。
「お帰りなさい梗子ちゃん。お友達?」
「同級生の人よ。紅茶と…何かお菓子もあれば用意してほしいの」
「殿方を連れられるとは珍しいですね、ほほっ。ではちょうど焼き上がったばかりのクッキーをお持ちします」
「いつもありがとう!」
老婆はダイニングに引き返す。どうやらその向こうにキッチンがあるようだった。
「…今のは?」
「小さなときからお世話になっている人です。父と母は、出張でほとんど日本にいませんから」
梗子はリビングに入っていった。
そこには大きなガラステーブルと、それを囲むソファーが四つ。グランドピアノを真ん中に、 一段高く畳の部屋も面していた。
「そこに座っていいですよ。鞄もそこに…、…ッ」
「──…」
「ハルクくん?」
ソファーのひとつを指差した梗子。
斜め下に伸びた彼女の手首を、ハルクが掴んだ。