《番犬女》は俺のもの
第28章 ──…逃げるな
──…
「…で 結局こうなるのか」
「負けは認めなきゃね茜さん」
「納得できん…!!」
レストランを後にして、すっかり夜のふけた街を零のマンションに向かって歩く二人。
不正解だった茜は彼に連行されているのだ。
「わかってないなぁ聖なる《夜》だよ?──…ね、夜。大事なのは夜なんだから」
「…くっ」
負けは負けか?
そうは言えど、零の持ちかけてきた勝負は無茶苦茶なので、このまま逃げ帰るという選択肢もないことはない。
けれど生憎の…走りにくい靴と服だ。
零をふりきれる保障はない。
「ハァ、わかった…」
茜は逃走を断念した。