《番犬女》は俺のもの
第5章 因縁
この商店街は零の登校路だ。
「どうしたの茜さん、朝から不良に絡まれて…。大丈夫だった?」
「…お前、1組の持ち場はここじゃないだろう」
「──え」
「朝の清掃はどうした!サボったのか…?」
「…いや、あの」
あれ?俺いま……
茜さんのピンチを救ったよね?
「転校生だからといって甘えるな。第二月曜日は2学年全員での清掃活動だと… 金曜のホームルームでも説明を受けただろう!?」
「……言ってたかも」
「かも、じゃない。清掃のサボりは放課後の罰掃除だからな」
「…はい」
「──…」
茜の後ろで見守っていた女生徒は思った。
今の篠田くんの登場の仕方は、ぜっったいに少女漫画のヒーローよ
なのに、なのに……
感謝されるどころか
いきなり怒られてるぅぅぅ
“ 篠田くんかわいそう… ”
“ かわいそう…”
“ かわいそう…”
「…かわいそ」
不良のひとりにまで同情が伝染し、心の声が漏れてしまっていた。