《番犬女》は俺のもの
第6章 おさめた拳 ( コブシ )
『……っ』
花崎さんはこっちに駆け寄ってきて
私の下ろした右手を取った。
両手でそれを包んで
じっと俯いて立っていたんだ。
身長が167センチの私では、154センチの彼女の表情を見ることはできなかった。
『…茜ちゃん…ごめんね』
『──…!?』
『わたしのせいだよね…、わたしが、いつまでたってもこんなだから…!! 』
『…違う、花崎さんは悪くない』
『わたし強くなるから。──だから…だからお願い茜ちゃん…、もう……っ…』
『……』
花崎さんの言葉はそこで止まったけれど、彼女が言おうとしていることは何となくわかった。
花崎さんがその時、泣いていたことも──
その声だけでわかってしまったんだ。