すべてはあの日から
第8章 対面
「…!」
「もしかしたら、
その人にも好きな人や婚約者がいるかもしれない。
……相手が君を好きだとは限らない」
真剣な誠さんが夜景の光に照らされ、
端正な顔立ちが一層際立つ。
「それに、清棲の御当主が認めるとは思えないし」
何も言い返せない…
斎藤さんのこと、全然知らない…
好きな人がいる可能性だってあるし、
お婆様にこのことを話したら、きっともう斎藤さんに会わせてもらえない。
「…まぁ、じっくり考えてみなよ、
期待して待ってるから」
不敵に笑う口元は意地悪なのに、
悲しそうな目に、胸がチクリと痛んだ。