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Slow🎵Step 〜不器用な二人のラブストーリー

第11章 Step 11



「あ… 落として来ちゃった」

馬鹿だな、私

戻る気にもなれなくて目に入ったベンチに力無く座り込む

あ… 雨

雨が一粒ポツリと一果の手に落ちてきた

どれ位その場にいたのだろう
気付けばキャンパスの端のひと気の無い吹き溜まりのような場所で木立に囲まれるようにぽつんと置かれたベンチに座っていた

「四季ー、ほらぁ濡れちゃうよぉ」

「ああ… 雨か」

咄嗟に顔を上げながら声のする方に目を泳がせる
少し先の歩道で立ち止まる里見の姿が木立の間から見え隠れしている
後ろから追いついた長身の女が綺麗に笑いながら女物の傘をさしかける
並んで通り過ぎて行く二人の後ろ姿を目で追うと、女は里見の腕に腕を絡めながら耳元で何か囁いたように見える

これ以上は見ていられない

二人から顔を背けため息を一つつくとのろのろと立ち上がった

「薬指、空けておいていいんだよね 約束だよね」

呪文のように呟きながらいつの間にか家の前に立っていた

四月の雨は残酷に冷たい
震える手を玄関のドアにかけるとずぶ濡れのまま崩れ落ちてそのまま意識を手放した


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