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一条蓮 続編

第1章 僕の手

お風呂からあがった私はリビングへ向かった。

(あっ……)

ベッドに腰を降ろした蓮くんが
自分の手を見つめている。
その瞳がいつもどことなく
哀しい色味を帯びて、
それはなんだか
触れてはいけないような気がしたから
私はグッと喉をつまらせる。

こうやって一緒に暮らすようになって
一緒の時間を過ごす蓮くんに
私はちゃんと寄り添っていれてるのか
ほんの少し不安だから
こんな時はちょっぴりおどけてみる。

愛「蓮くん、お待たせ♡」

私の声にハッとした蓮くんが、
さっきとは明らかに違う色で微笑んだ。

それが、本当なのか、
本当じゃないのか、
本当の本当がわからなくて
そこに向き合うだけの勇気もない私は
そそくさとベッド潜り込んだ。

一「愛実ちゃんいい匂い」

すーっと
私の後ろ髪に
蓮くんが鼻を寄せてきた。

愛「やだ……、くすぐったいよ」

身をよじり、
蓮くんの方に向き直る。

目の前にある指先に触れてみる。

愛「湯冷めしちゃった?」
一「え?そうかな?」

触れた指先が冷たいと
反射的に感じてしまったから
次の言葉がみつからない。

そっと触れられた蓮くんの指先が
私の指に絡まり
掌と掌を合わせた。

一「愛実ちゃんの手、小さいね」
愛「そうかな……?」
一「うん、ちっさい」

そう言って絡まる指先は
私をしっかりと繋ぎとめる。

一「ね、僕の手ってどう思う?」
愛「ど、どうって……?」
一「何か感想聞かせて?」

ねだるような、
甘い声で囁かれて恥ずかしくなってくる。

愛「……、好きだよ。綺麗で白くて。でもちょっと無骨な感じで」
一「ふぅ~ん。そんなんだ」
愛「うん。指も長くて器用だし」
一「こんな事もできちゃうし?」
愛「あっ……」

もう片方の指先が
身体のラインをなぞった。

思わず身体がピクリと跳ねる。

繋ぎとめられた指先が
先程よりも強く絡められる。

蓮くんを近くで感じる。

愛「蓮くん、どうしたの?」
一「ん?」

繋ぎとめられた指先は形を変え、
小指が約束の形に変わった。

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