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独り、片想い

第1章 #1

午前の授業が終わった後、
美里は親友の由真のもとへ行った。

「水飲み、行こう」

由真は、手紙のようなものに目を通していたようで、
その手紙を机の中にごそりとしまい、
いいよ、と机から立ちあがった。

「さっきの手紙、理穂からの?」

「うん、そうだよ」

加藤由真。
彼女には、荒川理穂という幼馴染がいる。
理穂は、中々独占欲が強い子であり、
クラスが離れて別のクラスになり、由真が美里と
仲良くなったとたんに、よく手紙を渡すようになった。

内容は、
私から離れて行かないで
だとか
私には由真しかいないの
とか
あの子、変な噂があるの
とか。

正直、由真は参ってしまっている。
まるで自分の自由を奪われている気がして。

「あ、星矢くんいるよ」

由真に言われ、美里がふとそばを見渡すと、
彼がいた。

少し茶色がかった髪は、さらさらしていて、
童顔の顔に、眼鏡をつけると大人っぽい雰囲気がする。
楽しそうに友達と話す星矢を見つめると、
目が合う。
そのすきに、にこりと微笑むと、星矢も一瞬目を丸くしたあと、にこりと微笑み返してくれる。

そんな行動で、美里の顔は一気に熱を帯びてしまう。
その頬を両手で覆い、
「やっぱいいなあ」
と呟くと、由真はふふ、と笑った。

自分からうまく話せない美里にとって、
彼の微笑みは、会話のようなものだった。


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