彼女の恋愛
第1章 落ちこぼれた彼女
【落ちこぼれ】ある組織や体制についていけない人のこと
彼女が産まれた時はまだ普通の女の子だった。
愛らしい表情に笑顏だけで周りを幸せな気持ちに
させた。
妹が2人産まれ幸せな時間も束の間、彼女の父親が仕事で大きなミスをした。
父親は気の弱い男で普段は蚊も殺せない性格だったが、酒を飲むと人格が変貌した。
ミスをした日から毎日酒を飲んでは暴れ、ついには
生活費もいれないようになった。
母親は病弱だったが3人の娘を抱え生活する為に
夜の仕事に就いた。
母親がいない時間は長女である彼女が、家事を
手伝い父親の顔色を伺いながら妹達の世話をした。
優秀だった成績は下がり忘れ物が増えて先生に
怒られる常習犯となり、次第に落ちこぼれのレッテルが貼られるようになった。
嘲笑や陰湿なイジメに耐えていた彼女は心が病んで表情がなくなってしまった。
魔法にかかったように全て元通りになればいいのに………
どん底でつぶやいた彼女の願いを神は聞き入れた。
それまで仕事に必死だった母親が彼女の異変にようやく気付いたのだ。
彼女の生気のない顔をみて事の深刻さを把握した
母親は僅かなお金と荷物を持って、飲んで寝入った父親を残し娘達と家を出た。
母親の実家に着いた瞬間に積を切ったように涙が
溢れた。
しばらくして彼女に表情が戻り、続いていたイジメも収まった。
全て解決したように見えたが生活が苦しい事に変わりはなく、これまで通り家事と妹達の面倒を任された彼女は根暗な落ちこぼれから明るい落ちこぼれに替わっただけだった。