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彼女の恋愛

第17章 不思議の国の彼女

《白ウサギ》

とある昼下がりの午後

「ふぁ〜、眠い…」

推理小説を読んでいたくるみは心地よい天気に思わずあくびが出てしまい、慌てて口を隠して辺りをキョロキョロ見渡した

(いくら敷地内でも外だし、誰かに見られていたら恥ずかしいし…)

幸い近くに人の気配はなくホッとしたのもつかの間、視界の片隅に怪しい影を見つける

(ん?小動物?)

よく見ると長くて真っ直ぐに伸びた白い耳とふわふわの丸い尻尾を付けたなつみによく似たウサギは大きめの懐中時計を右手にやっべー!と駆け足をしている

「…なつみ、そんな格好して何やってるの?」

「お姉!ちゃんと脚本読んだの?後で総監督に叱られても知らないよ?」

「総監督? なに言ってるの?」

「またまた!そんなボケかましながらしっかり衣装着込んでいるし」

言われてくるみは自分の姿を見るとギョッとした

丈の短い水色のパフスリーブワンピースは何故か胸元が露出している

その上に小さめの白いフリルのついたエプロンを付けているが全く胸は隠れず、逆に強調するかの様にウエストがきつめに紐が結ばれている

白いニーハイにストラップが付いた黒い厚底のパンプス、首元には黒いチョーカーと頭にも黒いリボンが付けられている

「何で!さっきまでハーフパンツにTシャツで本読んでいたのに⁉︎」

「 総監督は本気だよ〜?では気を取り直して…大変、遅刻だ!」

なつみこと白ウサギは懐中時計に目を配りながら茂みを目掛けて駆け出した

「ちょっと、なつみ!どこ行くの?」

「あ〜、今度こそ遅刻したら女王様に首を撥ねられちゃう!」

「待ってってば〜!」

くるみは白ウサギを追い掛けるとあと少しのところで木の根っこに足を引っ掛けて転んだ

転んだ先は大きな穴が開いていてくるみは真っ逆さまに落ちていった

「いや〜!死んじゃう!スカートが短くて速度が落ちない〜!ディ◯ニーの展開と違うー!!!」

ドスン!とお尻から落ちた先は広い空間でテーブルには私を食べて!とかかれたビスケットが置いてあった

(は〜、痛かった…こんな胡散臭いものは食べたくないけど食べないとここから出られないし…)

一口かじると、みるみる内に小さくなった

(これで小さいドアから出ればいいのね)

くるみはドアから出ると辺りは一面、深い森の中だった

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