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3月の僕たち

第8章 雑談8

周囲の後輩たちの表情が硬い。

圭一のご機嫌が悪いと部員たちも困る。

上出君だって居心地悪そうだ。

そう思って僕は話を切り替えた。


「ねぇ、さっきダイにあげた手帳なに?」

「知りたい?」

「うん」

「じゃあ、俺にも“あ~ん”してくれ」


 は?上出君にやきもちじゃなくて、コンちゃんに?


「ほら」


僕は大したことでもないのでソースをチョンとつけて圭の前に差し出す。


「ん♡上手い」


 ご機嫌になる。


---お手軽だなぁ。


「よし今度は俺が喰わせてやるからな・・・」


そう言ってバナナの皮をむくと一本なりフォークに刺してチョコソースをたっぷりつけている。


「そんなにつけたら垂れる・・・」

「ほら、泰弘・・・」


 ポタポタ滴るチョコバナナを口の前に出された。


「言わんこっちゃない・・・」


 滴るソースを舌で啜り上げるように舐め取りながらバナナに被りついた。


「いい顔だな、泰弘。可愛い♡」


何言ってんだ?

ニヤニヤと僕の顔を眺めている。


解らない男だなぁ---なんて思っていたら周りからヒソヒソ聞こえる。


「なんかエロいよな・・・」

「しばらく見ないうちにダイさんもマドンナもメッキリ色っぽくなってさぁ・・・」


---?!圭一の奴わかっていてやらせたな!


キッと圭一を睨み上げると、ハルちゃんが


「泰弘さん、チョコついてますよ・・・ここ」


そう言ってぺろりと舌を出して口端を舐める仕草をする。


皆が生唾を飲み込み


「やっぱダントツ丸山が大人になった感じだよな」

誰かの呟きに上出君が小さく咳払いをすると、皆が慌てて何事もなかったようにガヤガヤと食べ始めた。

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