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第1章 プロローグ
「あっちぃな…。
何とかならないのかよ、この天候。」
稜賀直生(りょうが なおき)は、ヘルメットを脱ぎつつそう呟く。
ヘルメットを脱いだその容姿は、まるでモデルのように整った外見だった。
落ち着いたブラウンの髪に、左耳だけ開けたピアス。通った鼻筋…。
端正なその顔立ちに似合わずぶつぶつと文句をこぼしている直生に、小鳥遊凜(たかなし りん)は声を投げてくる。
「ぼやいてないで、さっさと報告してくれよ。
…直生。」
女みたいな名前だが、れっきとした男である。
直生ほどではないものの、恐らく芸能界に身をおいていても可笑しくないほど整った顔立ちをしていた。
黒髪短髪の彼は、怒ったように仁王立ちしている。
「ほーい。カーブ曲がる時、右に少し傾くのが気になる。
ストレートの加速時、伸びがない。…以上。」
端的に直生はそう告げると、嘆息をこぼした。
現在、F1ワールドグランプリの真っ只中で、今日は、第5戦スペインGPのフリー走行一日目である。
カタルーニャ・サーキットにて、車を走らせてきたところであった。
稜賀レーシングチームがF1に参加するようになって、約5年になる。
インディカーのドライバーから直生が転身して三年めの今シーズン。
4戦中…3勝と幸先はいい。
昨シーズンは熾烈なワールドチャンピオンシップを制して今年は二連覇がかかっている。
何とかならないのかよ、この天候。」
稜賀直生(りょうが なおき)は、ヘルメットを脱ぎつつそう呟く。
ヘルメットを脱いだその容姿は、まるでモデルのように整った外見だった。
落ち着いたブラウンの髪に、左耳だけ開けたピアス。通った鼻筋…。
端正なその顔立ちに似合わずぶつぶつと文句をこぼしている直生に、小鳥遊凜(たかなし りん)は声を投げてくる。
「ぼやいてないで、さっさと報告してくれよ。
…直生。」
女みたいな名前だが、れっきとした男である。
直生ほどではないものの、恐らく芸能界に身をおいていても可笑しくないほど整った顔立ちをしていた。
黒髪短髪の彼は、怒ったように仁王立ちしている。
「ほーい。カーブ曲がる時、右に少し傾くのが気になる。
ストレートの加速時、伸びがない。…以上。」
端的に直生はそう告げると、嘆息をこぼした。
現在、F1ワールドグランプリの真っ只中で、今日は、第5戦スペインGPのフリー走行一日目である。
カタルーニャ・サーキットにて、車を走らせてきたところであった。
稜賀レーシングチームがF1に参加するようになって、約5年になる。
インディカーのドライバーから直生が転身して三年めの今シーズン。
4戦中…3勝と幸先はいい。
昨シーズンは熾烈なワールドチャンピオンシップを制して今年は二連覇がかかっている。