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第5章 ~過去の片鱗~

「学生時代と違ってそんな時間ないし。」




苦笑いを浮かべ、


そう返すと直生は一瞬後悪戯っぽい表情を浮かべ告げる。




「俺、思ったんだけどさ。


自分の彼女だったらストーカーなんかしなくても


自分の傍にずっとおいとけば安心するんじゃないかって。」




「前言撤回する。


やっぱりちょっと異常かもな、お前。」




栞の一件からあまり成長していない直生に唖然としながら颯太はそう返した。




「うん、そうだと自分でも思うよ。


でも、俺は全力で愛情表現しないと嫌なんだ。」




どうしても本命が相手だと二十四時間傍においておきたくて仕方がない。


栞の時もそうだったように、


抱きしめても…どれだけ肌を重ねても、不安で不安で仕方がなくて…。


不安をなくすために、


ずっと繋ぎとめておきたい衝動に駆られるのかもしれない…そう思った。




「私だったら、重いくらいのほうがいいなぁ。


本気で愛してくれてるって伝わるから…。」




呟くようにそうこぼした花音を眺め、


直生はさらに赤面する。




「あのさ…。


どうして、そう無防備にそんな事を言うかな?」




そんな事を言われたら、もう溺れていくしかないじゃないか…。


そう胸中でこぼし、直生は嘆息をこぼした。

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