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第5章 ~過去の片鱗~

「直生さんのさりげない優しさだと思うんですよね。


直生さんって自然に車道側歩いてくれたりとか気配り出来たりとかするじゃないですか。


そういうところがモテる要素だと思いますよ。」




にっこりと笑みを浮かべ躊躇いもなくそう返してきた彼女に、


直生は唇の端を持ち上げた。




「花音ちゃん、悪い男に引っかかるよ?


 車道側歩くのとか女性に気を遣うのは基本じゃん。


下心があるから優しくするんだよ。」




「……そんなの分かってます。


だけど、そういうのに女はときめいちゃうもんなんです。」





「素直だね、花音ちゃんは。


直生みたいな俺様な男に引っかからないようにね。」




二人のやり取りを静かに見ていた颯太が悪戯っぽくそう口を挟んだ。




「っるせ、俺様で悪かったな。」





吐き捨てるように颯太に声を投げると、


颯太は余裕の笑みを浮かべる。




「まぁ、俺様だけど……


どっか抜けてる直生って見てて飽きないよ。」





「凜と同じ事言うなよな。」




拗ねたようにそう返しつつ花音を見やる。


……と、彼女は穏やかに笑みを浮かべていた。


やはり、彼女は笑顔が似合う。


元々整った顔立ちの花音は、


綺麗すぎて黙ってすましているとどこか冷たい印象を受ける。


けれど、笑顔だと人間らしいというか、


より整った顔立ちが映える……そんな印象を受けた。




「花音ちゃん、笑顔の方がいいよ。」




「そうですか?」




花音は照れたようにはにかんだ。


そんな彼女を眺め、直生は思わず口元に掌をあてた。




(やばい、マジで可愛い。)




「直生、ストーカーにはなるなよ?」




珍しく顔を赤らめている直生に、颯太はそう忠告した。

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