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第6章 ~スクープ~

 翌日、朝陽を観光へ連れて行った後、


夕方になって急遽…凜に呼び出された。


待ち合わせたホテルのロビーに直生は姿を現すと、


凜の向かいに座っている若い男に視線を向ける。




「どちら様?」




怪訝げにそう声を投げると、


凜から座るように命じられた。


仕方なく直生は凜の隣に座ると眉をひそめる。




「何だよ。深刻な話なわけ?」




「お前さ、遊ぶのはいいんだけどさ。


相手を選んで遊べよ。


これじゃあ、いいわけしようにも出来ない。」




そう言って凜は週刊誌を直生に見せた。


直生はその写真を見て思わず呟く。




「抜け目ないな。


…にしても花音ちゃんって、本当に有名人なんだ。


しかも、一番いいところを撮ってるし。」




予選の帰りに彼女に思わずキスをしたところをバッチリ撮られていた。


しかも見出しは


『清純派レポーター…柚木花音、F1ドライバー…稜賀直生と熱愛中』


と書かれている。




「…で、いつ発売? 


揉み消せるような段階じゃないんだろ?」



直生が週刊誌に撮られるのはいつものことだ。


いつもなら、本になる前の原稿を見せられるパターンが多いのだが……。


基本的に本社に影響のないもの以外は、放置していた。


 だが、今回は既に店頭に売られている本そのものを持ってきている。


ということは、もう発売が決定しているのだろう。




「明日発売です。一応、現物見せに伺いました。」




「花音ちゃん本人には?」




珍しく真顔で直生はそう尋ねる。




「まだ今からですが…。」




「そう。


…じゃあ、俺から話すから。


編集長に了解得ましたって言えよ。」




低く直生はそう言うと、


若い男を睨みつけた。


そうして直生は嘆息をこぼすと、


花音の泊まっているホテルへと足を向けた。

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