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第7章 ~堕ちる彼女~

「十年? そんなに長く付き合ってたんですね。」



感心したようにそう呟く花音に、


直生は嘆息をこぼすと、口を開いた。



「うん、そうだね。


なんか十年とかいうと、すごく年とった気分になる。


十年前だと、花音は中学生?」


花音は直生より4歳下だから、24歳の筈だ。


あまりメイクをしなくても元々整っている顔立ちの彼女は、


きっと当時から人気があったのだろう。


そう、想像して……直生は頬を綻ばせた。


「そうですね、中学生かな。」



「可愛かったんだろうなぁ。


セーラー服姿、見たかったな。」



悪戯っぽくそう呟いて唇の端を持ち上げると、


花音は頬を膨らませた。



「もうっ! 


直生さんが言うとヤラしい。」



「なんでだよ。


ヤラしい意味じゃないって。


ただ純粋に当時会いたかったなって思っただけじゃん。」



苦笑をこぼしつつ、そう言うと、直生は再び口を開いた。



「花音は学生時代、部活何してた?」



「私は放送部でした。


お昼休みにランキング形式でヒットソング流したり、


体育祭で実況したりしてました。


直生さんは? やっぱり運動部ですか?」



「うん。俺は中高と陸上部だった。


小学校からカートしてたからさ、



筋力トレーニングも兼ねてやってた。」



懐かしげに瞳を細め、直生はそう返す。


穏やかなその表情は、ついさっき電話を片手に怒っていた人物と同じだとは思えないほどだ。


端正な顔立ちの彼は、怒った表情も絵になるというか、様になる。

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