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第7章 ~堕ちる彼女~

「……まぁ、怪我なくても無理やり抱いたりしないよ。


花音が俺に堕ちるまで、手は出さない。」



真剣な表情を花音に向け、直生はそう宣言した。


そうして、一瞬後……直生は徐に口を開く。



「花音はただ抱き寄せてるだけで、気持ちいいし。


なんか、抱き心地いいんだよね。」


花音の肌はすべすべで弾力がある。


それに、花音は姿勢がいい。


背中からお尻のラインがすごく綺麗で……、


花音を後ろ側から抱きしめるのが直生は好きだった。


「そんな感想いりません。


私は身動きできないし、窮屈です。」



嘆息を吐き出しつつ、強気な口調で彼女はそう返してきた。



「眠れない?


……身動きできないのが不満なら、


腕枕だけでもいいからさ。


俺、一人で寝るの苦手なんだよね。」




「相変わらず俺様ねぇ。」



苦笑をこぼしつつ、そう呟いて栞は仕事に戻って行った。




「あのぅ、直生さんって……


栞さんのこと好きになったりしないんですか?」



「は……? 


どうしてそういう質問?」



唐突の問いに、直生は思わず真の抜けた声音を発していた。



 颯太から過去の話を聞いている筈なのだが、


花音の中では直生の元カノ イコール 栞ではないらしい。


颯太が花音にどんな説明の仕方をしたのか直生は知らないが、


巧く分からないように解説してくれたらしかった。



「だって、気心知れてる感じだし、栞さん美人ですし。


私が男だったら、栞さんみたいな人に惹かれると思うし。」



「……栞は、凜の彼女だし。


親友の彼女を奪う趣味は、俺にはないよ?」



まさか、その凜に栞を奪われたなどとは言う事も出来ず、


直生は当たり障りのない程度にそう答えた。




「凜さんと栞さんって、長いんですか?」



興味津々に聞いてくる花音に、


直生は苦笑を浮かべつつ告げた。



「高校二年くらいのときからだから、十年くらいかなぁ。


さっさと籍入れればいいのに、凜のヤツ。」

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