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第8章 ~彼女の本心~

 それからフリー走行が始まるまでの三日間、


直生はひたすら彼女を誘いにホテルへと通いつめた。



遊び人の直生にとって、


女性を口説くのに通常は時間をかけずに堕としてきた。


けれど、彼女はそういう訳にいかないようだ。



かなりの美人で、それなりに恋愛もしてきたであろうに…


思ったよりもかなり手ごわい。



ショッピングや映画、観光巡りなど…色んなところへ連れまわしては、


口説き文句を吐くのだが、彼女にそれが効いているのか


イマイチ手ごたえがない。



「花音って…何が好きなの?


色んな所へ行ったけど、あんまり興味…示さないよね? 


もしかして、モナコ自体が苦手?


それとも、俺といるの退屈?」



お気に入りのカフェにて、


花音にそう問うと、率直な答えが返ってきた。



「退屈じゃないですよ。


でも、あんまり私…歴史詳しくなくて、


直生さんの説明…分かんない。


出来たら、ショッピングとか雑貨巡りとかの方がいいかも。


映画も私フランス語分からないですし。


内容、分からないんですよね。」



なるほど…言われてみれば、その通りだろう。


直生は幼い頃から、主要国の言葉は習ってきているが…


フランス語が堪能である日本人の方が少ないだろう。



「そっか。…雑貨って、どんな?


 小物系? それとも、インテリア系?」



「どっちも好きです。


直生さんって、色んなお店知ってますよね…。


どうして、そんなに詳しいんですか。」



僅かにテンションの上がった彼女に、


直生は唇の端を持ち上げると、曖昧に返した。



「ん…? いっぱい知ってた方が、便利だろ?


 …じゃあ、少ししたら、


花音の好きそうな小物系のお店に行こう。」


花音は、女の子らしいレースやらふんわりとした柔らかい素材のものが好きだ。



「ホントに?…可愛いのがあるといいな。」



一瞬にして満面の笑みを浮かべる花音を眺め、直生は瞳を細める。



 花音は、素直だ。直生はそんな花音の反応に惹かれていた。



「…花音のそういうところ、俺…好きだな。」



ストレートにそう言うと、花音は面白いくらいに赤面した。



「もう、やだ。…直生さんって、不意にそういうこと言うから…照れちゃう。」


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