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第8章 ~彼女の本心~

 恐らく花音のガードの固さは、


過去の恋愛絡みだろうと直生は踏んでいた。


花音は何かトラウマを抱えている。



そう確信しつつ、直生は口を開く。



「花音の過去まで詮索するつもりなんて、ないけどさ。


俺は花音を泣かせたりしないよ?」



「どうして、元カレに困ってたこと分かったんですか?」



茫然とそう言った花音に、直生は瞳を細めて言った。



「花音を毎日見てたら分かっちゃった。


……花音さ、俺に何か言いたいことあるよね? 


なんか、ブースでも言いたげな表情してたし。」



花音を覗き込むと、花音は視線を逸らせて俯いた。


そうして、消えそうな声音で告げる。



「私、直生さんの傍を離れるの嫌です。」



「え……、花音、日本へ戻んの?


ベルギーまで一緒じゃないんだ、急だな。」



不意に告げられた花音の言葉に、


直生は表情を強張らせそう返した。



「え…? 違う……、違います。


あの、直生さんの怪我が治っちゃったから


私もう必要ないかと思って。」



泣きそうな表情でそう言ってきた彼女に、


直生は安堵の息を漏らすと、素直に告げる。



「俺は、花音が好きだから傍にいて欲しいし、


俺は花音のところへ通うよ? 


花音を抱き寄せないと眠れないしさ。」



「直生さん……。私、直生さんが好きです。」



思わぬ彼女のその台詞に、


直生は自分の耳を疑った。



「…嘘。」



思わずそうこぼすと、花音は笑みを浮かべ告げる。



「どうして、嘘つかなきゃいけないんですか。


…本当に、好きですよ?」



「ありがとう…。」


不覚にも泣きそうになった。

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