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第8章 ~彼女の本心~

「夜くらい好きな物食べたいじゃん。


いつもは俺、昼……自炊してるよ?」



言い訳がましく直生はそう言うと、花音は視線を上げた。



「え……? 


直生さんって、料理できるんですか?」



「うん、料理も洗濯も自分でするよ。


レーサー生活長いからね。


それに、たまに実家に帰ると


作らさせられるしね。」



(顔、良くて…頭良くて…スポーツ万能で、


その上家事も出来るって、弱点ないの? 


このヒト。)



胸中でそう呟くと、花音は当たり障りのない程度に返した。



「そうなんですね。」



「花音ってさ、もしかして恋愛経験少ない?」



不意に直生はそう聞いてきた。



「どうしてですか?」



「うん……。


なんか男慣れしてないっていうかさ、


反応が初々しいというか。」



「まぁ、多いとは言えませんけど。


直生さんもヒトのこと言えませんよね?」



花音は学生時代からたった一人だけしか付き合ったことがない。


それも十年近く付き合って、


浮気性の彼に愛想をつかして別れたのが二年前だ。



「ははっ、言うね。


まぁ、俺も本気で付き合った彼女は少ないけどさ。


女慣れはしてるよ?」
何故かドヤ顔で直生はそう自慢してくる。


そうして、直生は一瞬後拗ねたように口を開いた。



「ねぇ、いい加減に堕ちてよ。


割とガード固いよね、…そこもいいけど。」


そうして、嘆息をこぼす。

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