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第10章 〜浮気騒動?〜

「今日は亜紀のためにスケジュール空けたんだから、忙しくないよ。」



そう言いつつ、直生はカフェの代金を払い亜紀とともに店を出た。



「直生? なんなの? 


もう私に用はないでしょ?」



「うん。でも、亜紀はまだ気が収まってないように見えたから。


全部吐き出しちゃえば? 


本当は俺に言いたいことあるんだろ?」



亜紀と歩道の脇に来たところで、直生はそう真剣な瞳を彼女に向け言った。


彼女は今にも泣きそうな瞳を向けた。そうして、呟くように告げる。



「直生が好き。」



「うん、知ってる。」



穏やかに彼女を見つめ、直生は冷静にそう返した。



「ずっと、直生が好きだったよ。


だからちゃんと振ってよ。


でないと、忘れられないじゃない。」



「亜紀の気持ちはずっと知ってたよ。多分、初めから。


でも、俺は花音以外のヒトに本気になれない。


だから、亜紀にはもっと俺よりいい男に本気になってほしいな。


亜紀はいい女だからすぐに彼氏が見つかるよ。」



亜紀は客観的に見て美人だと直生は思う。


それにサバサバした性格の亜紀だが、意外に脆いところも可愛らしいと思う男は多いだろう。



「……当たり前でしょ? 


私、結構モテるんだから。」



彼女はそう言うと、唇の端を持ち上げる。


そうして、直生の上着の襟を引っ張ると、挨拶程度のキスを交わした。



「じゃね。慰謝料代わりに頂いておくね。」



片目を瞑り、そういい残すと掌をふりつつ去っていった。



「相変わらず女にしとくの勿体無い性格だよ。」



嘆息を一つ吐き出し直生はそう呟くと、踵を返して、パドックへと足を向けた。



偶然、花音がキスの現場を見ていることに気づかないまま。

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