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~夢の底─

第3章 ─秋が、燃える。

 濃い灰のダスターコートを取ると、パール色のオフタートルのセーター姿になった。「ミルク切らしたんだ」砂糖のガラス壺をすすめる。「このままが美味しいです」そっと受け皿にカップを戻した。「ハーブ紅茶、おいしい? 俺苦い…」砂糖を小匙でかきまわす。
「ユノ先輩。帰られたばかりですよね、お邪魔してこんな時刻に…恐縮です」カップを両方の手に挟むように持ち、お茶を啜るユノは、目元に笑いを浮かべ、首を振った。「明日朝─帰るんなら、話は今、聞くよ」再び、ヒースに笑いかけた。
「昨日、電話で直接会って話したい、…って何だろう?」「先週、ユノ先輩から僕、お気持ち…頂きました」「うん…、俺らふたりのね…」「それを、お返しします」白封筒を丸テーブルに静かに置いた。
 「どうして?」「僕…チャンミンさんとは、何でもなかったんです」チャンミンの名前にユノの頬は、ピクリと引きつった。「海やキャンプ、二人で出掛けました。でも」ふたりの間にハーブティの香る煙が、ゆっくりと流れ立つ。「先輩と後輩。それだけです、辞めたばかりの事務所の」伏し目がちにしていた瞳を、ユノの顔に当てた。
「だったら、どうして」 テーブルの封筒にユノの目が向けられた。

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