~夢の底─
第7章 晩夏風──
……肩がけの紺のバック紐を左手で掛けなおすと、楕円の白いアーチに囲まれた公園に入る。
広い公園のところどころに、アーチと同じ色のベンチが並び、遠くに灰がかった白のオブジェも見えた。……噴水らしい。
ソーダの泡そっくりの噴き出しが、時折ぶあつい雲の隙間からの陽ざしに、光の粒子に変わる。
噴水の向こう、ビルディングの谷間から、誰かに呼びかける声がした。
地響き……。遠くはない海からの大波の轟きのような香港は、目まぐるしく変貌しながら、天を飛ぶ大龍──。
街角の呼び声の反対のほう、軽やかなチャイムが鳴りだす、…午後の時刻になったようだ。
──探すものが、まっすぐに眼に入って来た。
薄いベージュのサマーセーターの背中、車椅子を押しながら、振り返り、後からゆっくりと歩く小柄の老婦人に、話しかける……。立ち止まって、いくらか細くなったようにも見える姿を追っていると、老婦人がこちらに向いている。小柄な体を包む淡い色のワンピースの裾が、風に少し揺れる。
慌て、会釈しようとすると、自分の前に走って来て、「…チャンミンさん?」目を丸くして、チャンミンをまじまじと見つめた。
広い公園のところどころに、アーチと同じ色のベンチが並び、遠くに灰がかった白のオブジェも見えた。……噴水らしい。
ソーダの泡そっくりの噴き出しが、時折ぶあつい雲の隙間からの陽ざしに、光の粒子に変わる。
噴水の向こう、ビルディングの谷間から、誰かに呼びかける声がした。
地響き……。遠くはない海からの大波の轟きのような香港は、目まぐるしく変貌しながら、天を飛ぶ大龍──。
街角の呼び声の反対のほう、軽やかなチャイムが鳴りだす、…午後の時刻になったようだ。
──探すものが、まっすぐに眼に入って来た。
薄いベージュのサマーセーターの背中、車椅子を押しながら、振り返り、後からゆっくりと歩く小柄の老婦人に、話しかける……。立ち止まって、いくらか細くなったようにも見える姿を追っていると、老婦人がこちらに向いている。小柄な体を包む淡い色のワンピースの裾が、風に少し揺れる。
慌て、会釈しようとすると、自分の前に走って来て、「…チャンミンさん?」目を丸くして、チャンミンをまじまじと見つめた。