~夢の底─
第7章 晩夏風──
すぐに駐車中の車の間を縫うようにして、ミニバンは大通りに出て行った。チャンミンは身動ぎもせず、見送った。ミニバンはスピードを上げ続け、彼方のものと、なった。香港の街中、独り取り残されたように、チャンミンは佇んでいた。
街の喧騒は、まるで独りきりなチャンミンを、包み込むようだった。チャンミンの掌の中で、手渡せなかった夏と波の思い出のシャトルは、砂の城の化石の形に見える。 そのままの姿勢で、手の中で指先だけを動かし、シャトルにそっと、触れさせた。傍らを学生たちが大声を掛け合い、急ぎ足でチャンミンには目もくれないで通り過ぎて行く。さざめき笑い声だけをチャンミンの耳に残して─。この香港の街の…若いヒーローたちはプラカードやボードを抱えていた。やがて……彼らのさざめく声は潮騒の繰り返すリズムに、変わる─午後の香港の街角──。
もう一度、ヒースのアパートに戻って、シャトルを管理人に彼に渡してくれるよう頼もう。─そして、養父の容態も訊いて…病院に行ったのなら、お見舞いも伝えたい。 そう思いながら、チャンミンはヒースの去った方角を、いつまでもじっと見つめていると、海に通じる道なのか、清々しい風を頬に感じた。
街の喧騒は、まるで独りきりなチャンミンを、包み込むようだった。チャンミンの掌の中で、手渡せなかった夏と波の思い出のシャトルは、砂の城の化石の形に見える。 そのままの姿勢で、手の中で指先だけを動かし、シャトルにそっと、触れさせた。傍らを学生たちが大声を掛け合い、急ぎ足でチャンミンには目もくれないで通り過ぎて行く。さざめき笑い声だけをチャンミンの耳に残して─。この香港の街の…若いヒーローたちはプラカードやボードを抱えていた。やがて……彼らのさざめく声は潮騒の繰り返すリズムに、変わる─午後の香港の街角──。
もう一度、ヒースのアパートに戻って、シャトルを管理人に彼に渡してくれるよう頼もう。─そして、養父の容態も訊いて…病院に行ったのなら、お見舞いも伝えたい。 そう思いながら、チャンミンはヒースの去った方角を、いつまでもじっと見つめていると、海に通じる道なのか、清々しい風を頬に感じた。