
「先生、食べちゃっても良い?」
第12章 特別室 その参
ねだる様な言葉と求められる事の嬉しさに本能が踊らされ、一瞬言われた通りキスしてしまいそうだった。
しかしぐっと理性を抑え、ゆっくり口を開く。
「……でも、キョウ君、キスしたりする人沢山いるんでしょ? 山田さんみたいに……」
「もしかして嫉妬してる? 先生も子供っぽいところあるんだね」
まさかそんな言葉が返ってくるとは思わず、聞いた途端抱きしめられる事を阻止したくなって両手で胸を突き放した。
……子供っぽいなんて、嫉妬する事の方が当たり前だ。
誰だって自分だけを愛して欲しいのに、彼は一人を愛する事の方がおかしい様な口ぶりをする。沢山の女の子と関係を持つ事に抵抗がない。
何故そんな風になってしまったのかは分からないけど、やっぱり私は数多い異性の中の一人でしかないんだ……。
「嫉妬する先生、可愛すぎて……どうしよう。もう、今すぐ抱きたい。ダメ?」
突き放す筈がそのままぐっと引き寄せられ、更にきつく抱きしめられる。
そしてそのまま耳に舌を這わされると、吐息混じりの穏やかな声がすんなりと聞こえてきた。
「もう日向先生の事、怒ってないよ」
「あっ……だめ……したく、ない、私……」
「何で? 久しぶりだからSEXの仕方忘れちゃったとか?」
「違う……キョウ君……私の事好きじゃないでしょう? 私は沢山いる遊び相手の内の一人なんでしょう……?」
耳孔の中に舌を押し込まれると、全身にぞわっと鳥肌が立った。くすぐったさと舐める音のいやらしさに体の力が抜け、キョウ君の両肩を掴みながら体の体重をキョウ君の体へ預けてしまう。
