青い桜は何を願う
第10章 エピローグ
「──……」
「希宮さんって子とは?」
「っ…………」
それは思いもかけない問いだった。
さくらは、首を横に振る。
「暫く、会えないそうです」
「そっか。……」
「あの、……」
「彼女なら戻ってくる。それまでは、このはと私が側にいる」
「え……」
さくらは流衣に聞かされた。リーシェの騎士が、否、さくらの大切な人がどこへ行ったのか、意外にも、目前の美人が知っていた。
話によると、莢は、善満の所有している地下基地に身を潜めているという。潜入調査のためだ。リーシェ・ミゼレッタの魂は、華天の復興を目論む組織を刈らない以上、狙われ続ける。そして件の土地を管轄している組織こそ、「花の聖女」という存在を唱え始めた第二創世会だ。莢の友人、香苗という少女が、かの国の重役にコネクションがあるらしい。莢は、リーシェを脅かすものを内部から毀すつもりだという。
「そん……な、私……私も行きますわ」
「却下」
「このは先輩っ……」
リーシェが狙われているのは、さくら自身の問題だ。
守られてばかりいたくない。
こんなにも強く願っているのに、さくらは、いつまでもプリンセスでしかないのか?
莢の側に行きたい。行って、同じ運命を分かち合いたい。
「さくらちゃん」
「潜入って言っても、意外とバレないものだから」
「そう。先輩なんて、義満と同じ屋根の下にいるんだよ。見事にバレてないよ」
「──……」
さくらは、このはの片手を握り返す。
二度と触れられないと思っていた。このはは流衣を愛している。さくらと一緒にいては、きっと一生、本当に幸せになどなれない。それでもこの手が離せない。