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青い桜は何を願う

第10章 エピローグ


「…………」

「さくらちゃん」

「──……」

「お姫様は、無条件に愛されるもの。……それで皆を救ってるの。希望になるの。神様と同じだぁ」

「…………」

「莢は、多分、氷桜に侵されてる。それでも行くしかなかった。さくらちゃんを守ること。氷華と天祈の悲劇を断ち切るために、さくらちゃんは、必要なの。私達の希望になる。華天は理想郷かも知れないけれど、ここは神話の世界じゃない。再興させるわけにはいかないの」

「あ……」

「さくらちゃんが、本当に何かしてくれるつもりなら、想ってあげて。あの子を。ミゼレッタ家の継承者の想いが、氷桜を無力にするから」

「…………」

 さくらに、十日ほど前の記憶が押し寄せてきた。
 真淵の罠に嵌まって氷桜に侵された。そして、リーシェの体質を引き継いでいるにしても早すぎる回復を遂げた。さくらと同じ痣を持つ、このはの力だったのだ。このはの想いが、さくらを救ってくれた。

「私は、よこしまな方達に……思い通りにされたり致しませんわ」

 さくらは、このはと流衣を交互に見る。

 必ず守る。守られながらも、守ってみせる。

「このは先輩も、銀月先輩も、莢ちゃんも。……大好きですもの」

 桜風が舞ってゆく。真新しい春の色をした碧落から、きらきら、白銀色の光が降り注いでいた。







青い桜は何を願う─完─
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