二面性*マクガフィン
第3章 学年1位のエリート
「本当に抵抗…しないんだね…」
今度はその撫でた道を舌で上書きしていく。
そうすると電気のように。素早くその感触が伝わっていって。
「……ア…ァ 」
可愛らしい、小動物のような姿が目の前に現れる。
唇をペロッ...と舌先で触れてみる。
「身体は正直だ…、俺にちゃんと反応してくれてる…」
肩の先、辿り着いたところにキスを落とす。
「…………ハァ…ハァ…誰だって…そうなるものでしょ…」
息の連鎖を断ち切って、今日のうちに何度も触れた彼の頰に手を添えると、
視線が対等になる。
女は、口角を上げながら、
今までで1番温かい息を吐いた。
「……こうふん…する?」
少し裏返りながらの、その言葉。
それは、性的に言う『煽り』そのもののよう。
それ以外には思いつかない…。
そうゆう風にしか聞こえなかった。
何故だろう…。本当に。
今日初めて会ったばかりの人間、女、
関係は築かれたばかりのそれだけなのに、
何故…この女は…
考えるよりも先に唇が動いていた。
糸で引かれたように彼らの唇が合わさって、愛のないキスを連続させる。
雫が流れていくのなんて気にしない。
ただ、彼らの先だけが親しみ合った。
ここは屋上、そして、
生徒が徐々に帰宅していく時間帯。
…だからか、
本当に2人の邪魔をするようなもの、人はいなかった。
時々小さく聞こえてくるのは、下の方、日が暮れるまで行われる部活動の声、学園外の騒音…くらいだった。
でも、本当に小さい。だから、気にならなかった。
「…………ハァ…ハァ…」
「………ハァ…ハァ…ハァ」
離した瞬間、息が上がってしまう。とても荒い。
それと同時に体温が上がる。…呑まれそうだ。
苦しいはずなのに、そのままお互い離れなかった。
いや…正確に言えば、翔に閉じ込められているために、体は離れているが、離れられなかった。
そんな女は、ここまでされてもやはり、
抵抗…それする素振りさえ見せなかった。