テキストサイズ

embrasse-moi

第3章 今日は遅い私と、

「あっすみません…」


男性は渚に急いでつくねを返そうとする。


渚が顔を上げると、




「内田くん…?」


つくねを持っていたのは新入社員の内田だった。



「どうかしましたか?」




その爽やかな笑顔を間近で見ると、ちょっと…



「ううん!何でもないの。
今日は新入社員の歓迎会なんだから、
遠慮しないで食べて」


「え、でも…」


「大丈夫だから。ほら、食べて」


どれだけ言っても困った顔をして食べようとしない内田が、急に提案をしてきた。


「じゃあ、半分こしましょう?」



この人は無自覚なの?それとも、小悪魔なの?


渚はなるべく動揺が見えないようにして答えた。


「内田くんがそれでいいなら、私は全然いいけど…?」



「じゃあ、はい!どうぞ」


内田はつくねから上手に串を抜き、箸で半分に割って、渚に差し出してきた。


「あ、ありがとう」


渚がつくねを受け取り、頬張ると内田は優しい笑顔で顔を覗きこみながら聞いてきた。


「おいしい?」




その顔は反則じゃない…?




「…うん、おいしい」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ