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マシュマロボイス

第9章 今を動かす気持ち

「…帰っちゃうの?」

手首を掴んでた手が、
ゆっくりと掌に落ちてきて、
そのまま握られた。

「…うん」
「そっか。」

寂しそうに笑ってた。
俺ら、付き合ったばっかりだよね?

そんな笑顔、見せちゃうの?

「相葉」
「ん、どうした?」

「俺、病院行ってくる」

何も返せない。
二宮君の右耳が聞こえなくなることは知ってる。

けどね。
詳しいことを知らないから、
何も返せないんだ。

「そっか」
「行ってらっしゃい」
全ての言葉が薄く聞こえる。

「ねえ、相葉」
「…」

「俺ね、頑張るから。
右耳は聞こえなくなっちゃうけど、
左耳は…壊したくな──」

思いっきり、二宮君を抱き締めた。

「うん、わかってるから。
…俺、わかってるから。」

わかってたいから。
二宮君のこと、わかってたいから。

「…っ、相葉」

俺、ずっと隣にいるから。

「…みんな、見てるよ…?」

涙声で言ってるけど、
俺のこと思いっきり抱き締めてる。

「見せてんのっ!」

身軽な二宮君を抱えあげる。

「ちょ、相葉!」

涙の跡がついてる二宮君に、
微笑みかけたら、
二宮君も笑ってくれた。

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