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マシュマロボイス

第16章 揺れる心映す様に

何でだ?
本当は雅紀が泣いて、俺が一番抱き締めて告白して。

俺の物にする手順だった。

「…ごめん」

謝るしかなかった。
脳内計画が大幅に狂ったんだ。

謝っても泣き止まない雅紀。
自分が酷いことをしてるって嫌でも思い知らされる。

「雅紀、泣くな…」

…でもこのままじゃ終われ──

「翔ちゃんの左耳は、聴こえる?」
「え?」
「まだ、聴こえる?」

俺の左耳はもう聴こえない。
それを秘密にして補聴器を着けてる。

「…ううん、もう聴こえないよ」

何だか嘘をついてはいけない気がした。

「じゃあ…」
「ごめんね、ずっと隠してた」

高校に入りたての時は、聴こえてた。
けど、それは急だった。

プツッと、何かが切れた。

「翔ちゃん」
「あ、はい」

雅紀が真剣な顔をしてた。

「ちゃんと俺に話して」

初めてだった。
雅紀が俺にこんな説教染みたことを
言うなんて。

「俺、力になれるように頑張るから」
「……」

変わってた。
雅紀は強くなってた。

俺が届かないくらい先に
行ってしまった。

「翔ちゃんには、友達が沢山いるよ」
「…うん」

「一人で抱え込まないで」

雅紀は、一生懸命で素直。
だから俺が傍にいないとって、変な正義感があったんだ。

だけど、
雅紀も俺も成長したんだ。

いつまでも、この変な正義感を持っている訳にはいかないんだ。

「翔ちゃん、泣かないで」

今度は俺が泣く番だった。

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