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マシュマロボイス

第16章 揺れる心映す様に

(櫻井side)

こんな終わり方をするなら、
音なんて、声なんて、聴こえなきゃ良かったんだ。

聴こえなきゃ、
和也と雅紀のことを応援できた。

和也が普通の恋愛ができた。

『んなこと、言うなよっ…』
「……ごめん」

お前の分も引き受ければよかった。
不幸なのは俺だけで十分だ。

『俺は…お前がいたから左耳が聴こえてるんだ。お前がいなかったら、聴こえなかっただろ?何もかも。』

“何もかも”

それでよかったのに…。

『安心しろっ!』
「…え?」

急に声が明るくなるから、驚いた。

『俺がいる』
『俺もー!』
『あ、俺もいるぞ!』

…みんな。

『一人じゃないからな、智も潤君も、相葉だってお前の味方だから』

『あ、ちょっと変わって』
『え』
『お願い、ニノ!』
『えーどうしよー』
『アイス、奢ります』
『はい♡』

いつもの戯れ合い。

『しょー』
「……智」

愛しかった声。

『一人で背負わないで』

……そっか。

『しょーを受け入れない訳なんて、
ないでしょ』

俺が好きになった相手は、
みんな優しくて温かかった。

「あ、翔ちゃん!」
「え、雅紀」

帰ったはずの雅紀が戻ってきた。

「お会計、忘れてたっ」

…俺はここがファミレスだってことを
忘れてた。

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