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マシュマロボイス

第3章 あの日からちっとも変わらない

補聴器にもいろいろ種類があった。

コントクトの、ハード的な。


「あー、これダメ。耳痛い」

楽しかった。
普通に服を選んでるみたいで。

「ありがとうございましたー」

店員さんの声を背中に、
母親と笑いながら帰った。

中学生にもなって、母親と買い物なんて同級生に引かれると思う。

実際、引かれてるし。

でも、誰にも耳が悪い事を知られてないだけまだマシかな。




──補聴器の活躍ぶりは凄かった。

遮断回数が減ったというよりも、
遮断されることがなくなった。


そんな生活に慣れたとき。





「引っ越し、してもいい?」





母親にそう告げられた。

初めはビックリしたけど、
最近の母親は元気がなかった。


きっと、離婚した父親が
「金を貸せ」って母親に迫ってきてるのだと思った。


だから、俺は素直に頷いた。


母親を守れるのは自分だけだから。

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