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はな*つむ

第3章 ハナ

 お札により結界が施された薄暗い室内に、蛇のような形の生き物が這う。
 形は蛇の様ではあるが、目は無く、口も無い。
 口の代わりに、先端部分には小さな穴が開いていて、その穴からはぬるりとした液体を溢れさせていた。

 ぷくぷくと長い体を膨らませたり伸ばしたりしながら這う姿はミミズの様にも見える。

 その蛇のようなモノは何匹も存在していて、室内で蠢いていた。


 その不気味な存在が居る室内に氷桜は居た。


 そして、彼の眼差しの先には一人の妖怪が居る。

 その妖怪は鱗女(うろこめ)と呼ばれている物だ。

 名前の通り、それは女の姿をしている。
 上半身は女の身体、下半身は美しい色合いをした魚の物になった姿。

 人魚と間違われやすいが、海に住む人魚と違って鱗女は川や湖に住む。
また、人間に近く美しい容姿の人魚とは違い、鱗女の顔は妖怪らしい。

 しかし、妖怪らしくおぞましさを含みつつも、その顔は中々に美しくもある。


 氷桜が見詰める先にいる鱗女の身体には、蛇のような奴等が絡み付いていた。

 柔らかな二つの胸の膨らみに絡み付き、先端の穴でその頂に吸い付く者もあれば、口の中に侵入している者もある。

 鱗女は長い青色の髪を乱し、熱の上がった顔をしながら涙を流していた。

 魚の足に絡む者が、執拗に足の表面を擦る。
 それは何かを探している動きだ。
 そして……目的の物を見付けた異形の蛇は先端から一際濃くドロリとした液を溢した。

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