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すき ずっと

第2章 それからのわたし

初めて喋ったあの時から、すれ違いざまに会釈をするようになった。
これといった進展は無かったけれど、先輩を見かける度にわたしの胸は大きく高鳴るようになった気がする。

どこが、って言われるとわからないけれど、わたしは先輩のことをかっこいい、と思うようになっていた。
廊下で、階段で、帰り道で‥。
つい目で追ってしまう自分がいた。


ある冬の日。
雪の積もった帰り道。

部活の後輩と帰る先輩を見つけた。
偶然にもその後輩というのは、わたしの中学からの友達で。

行ってみようか‥。

そう思い、駆け足で彼らの近くまで向かった。
そんなわたしに気づくことなく、先輩は近くの街路樹に積もった雪をドサドサ落として楽しんでいる。

「あ、あかねちゃん」
「楽しそう‥だね‥」

苦笑いしながら言うと、うちの先輩変人だから と友人もまた呆れた表情で言った。
ようやく先輩がわたしの存在に気付いた。

「お、あかねもやる?」
「ええ、やらないですっ!!」
「あかねは先輩みたく変態じゃないからー」
「変態じゃないですう、雪遊びを楽しむ無邪気な男の子ですう」

先輩と友人のやり取りに、わたしも楽しくなっていた。

帰り道の間、いろいろな話をした。
先輩の家がどこにあるのか、部活は何部なのか、頭はいいのか‥。

「もうすぐバレンタインだなー」

そして、バレンタインの話も。

「先輩はあれでしょ、お母さんから1個パターンでしょ」
「んなわけないし!もってもてだから!」

相変わらずの2人のやりとりに笑いながら、意識は別のところにあった。

バレンタイン‥。

わたしも先輩に渡してみようかな、と思った時に、ふと耳に入ってきた先輩の小さな声。

「チョコ嫌いなんだけどねー‥」


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