
欲望
第3章 追いかけて追いかけて
それから数日後
各クラス進路指導のための個人懇談が始まった
「こういうことが始まると、担任じゃないって結構ダメージ大きいよな~」
いつものように休憩時間話しているときまゆが言った
確かに、吾妻先生に懇談してもらえたらうれしいけど別に進路の話だしな~
咲妃はそれぐらいにしか思ってなかった
その日の放課後、咲妃は先生にお話ししに行こうと思って何気なく隣の教室のドアを開けた
教室の後ろのほうの席で、向かい合わせに並べた席に先生と隣のクラスの女の子が座っていた
咲妃のほうからは先生の顔しか見えないから誰なのかはわからない
ただ、その子の頭を先生がなでていた
少し困ったような優しい顔をして・・・
ドアの音に気付いた先生はあわてて手を引っ込めて言った
「藤本・・・。今、懇談中やから後にして」
女の子は泣いているようで顔を上げなかった
咲妃は動けなくなってしまっていた
「藤本?」
次にそう呼ばれた瞬間、体がビクンとはねた
「すみませんでした」
咲妃は、急いで振り返って走った
目から、知らないうちに涙があふれてた
咲妃は、自分の教室に入って、すぐ帰る支度を始めた
「ちょっと・・・咲妃どうしたん?」
まゆの問いかけに返事もしないまま、咲妃は教室を飛び出した
