君のそばに
第9章 お餅焼きし者2
入学式が終わって数日がたった頃。
いきなり現れたライバルに、全部持っていかれたのだった。
僕とフジとこーすけとキヨは、いつも四人でつるんでいた。
キヨ 「 でさー、こんくらい大きくてね、やばかったんだよ 」
フジ 「 へー、そうなんだ 」
コ-スケ「 そんな大きいのいたらやばいな 」
僕は気付いてしまった。
フジがキヨに惚れていることに。
明らかに雰囲気が違う、僕といる時と・・・何かが違うんだ。
僕はフジに気付かれないように、ちらりと顔を見る。
フジの表情は、まるでおとぎの国を夢見ている乙女のようだった。
キヨが王子で、フジが姫か・・・。
お似合いっていえば、お似合いだな。
キヨが羨ましい。
僕にないものを全部持ってる。
コミュ力も体力も学力・・・は僕の方が上だけど・・・。
何より、フジの気持ちを手に入れているのが一番羨ましい。
キヨが憎い、憎い憎い憎い。
キヨ 「 ?ヒラどうした? 」
ヒラ 「 ・・・!?な、なんでもないよっ、ちょっと考えごとしてた 」
フジ 「 何か顔色悪いよ? 」
ヒラ 「 そんなことないよ・・・ 」
俺は今作れるだけ作れる精一杯の笑顔をフジにむける。
・・・が、フジはお見通しのようだった。
フジ 「 そんなことあるでしょ、どこか痛いの? 」
ヒラ 「 いや、ほんとになんでもないって・・・ 」
フジ 「 嘘、俺にはわかるよ 」
ヒラ 「 ・・・何もわかってないよ 」
コ-スケ「 ヒラどうした・・・ 」
ヒラ 「 僕、ちょっと用事思い出したから・・・か、帰るね 」
こんなところで、ボロだしてたまるか・・・!
こんな公開処刑はあんまりだ。
キヨ 「 ちょ・・・、ヒラ?どうし・・・ 」
ヒラ 「 ばいばい!また明日ねみんな! 」
俺は全速力で廊下を下る。
このまま階段から飛び降りてしまおうか。
その痛みで、この心の痛みが消えるなら、それのほうがいい。
フジ 「 ・・・俺、ヒラを追いかけるわ 」
キヨ 「 え、でも用事って・・・ 」
フジ 「 あんなヒラみたことないし、ほっとけないよ、じゃあね!また明日 」
フジは教室を飛び出して僕を追ってきた。