君のそばに
第11章 優しいオオカミ
キヨ 「 あ、そうだ、お前どれか一本花選んでよ 」
フジ「 え、俺が? 」
キヨ 「 うん、なんかセンス良さそうだし 」
フジ「 うーん、どれがいいかなあ... 」
オオカミは迷いに迷って、1本の黄色の花を1本彼の髪につけた。
フジ「 君は黄色が似合うから、この黄色の花、赤の方がいいのかもしれないけど、君に似合うのは黄色だ 」
そう言うと、オオカミはにっこり、と微笑んだ。
キヨ 「 ...ッ、...男がこれつけてるの変じゃね?ってか、俺村の方では傍若無人の血の似合う男って言われてんだけど 」
彼はバカにしてんの?といいたそうか顔でオオカミを睨みつけた。
フジ「 君、以外と優しい所あるの知ってるよ?ま、確かにその異名にその可愛いのは似合わないかもしれないけど 」
オオカミはくすっ、と笑った。
キヨ 「 お前、やっと本心で笑ったな、悲しい顔しやがって、俺にはわかるんだぞ 」
彼はニッ、と笑いオオカミの耳に花をつけた。
キヨ 「 お前は紫が似合う、それ、大事にしろよな 」
ぷいっ、とそっぽを向いて彼は言った。
彼なりの精一杯なんだろう。
キヨ 「 んじゃ、俺そろそろお見舞いに行くわ... 」
彼は立ち上がり泥をはたいてオオカミを見た。
キヨ 「 ...また、会えるよな? 」
彼はオオカミをじっ、と見つめて聞いた。
オオカミは一瞬固まったあとに、微笑みながら言った。
フジ「 君がそう思っててくれるなら、絶対また会えるよ、だからね俺の事心の片隅に入れておいて欲しいな 」
キヨ 「 ...うん、わかった、心の片隅なんて言うなよ..仕方ねぇから心の真ん中に入れといてやんよ 」
彼は照れくさそうに笑いながら、オオカミの頭をくしゃくしゃ、と撫で背中を向けた。
キヨ 「 んじゃ、行くわ、お前も俺の事忘れんなよ 」
彼はそれ以上何も言わず、手をヒラヒラとさせて道を歩いていった。
フジ 「 ......、忘れるわけないじゃん..ずっと、ずっとずっと君は俺の心のド真ん中にいたんだから... 」
オオカミはその場に泣き崩れた。
彼は振り返ることはなかった。