
山岸君と照井君
第31章 愚か者―――……
十分に身体を暖めた俺は、浴室を出た――――――…
リビングでは、岳心さんがテレビを見ているのか…
朝の情報番組の音が聞こえる…
意外に……庶民派?
山岸家の人間はテレビを観ない…
雑談はしない…
聴くのはクラシックの曲だけ…
と言うイメージだったのだが…
と、言うか…苑君の家や旦那様や雷心さんのマンションはそうだった――――…
俺は、山岸家の日常を思い返しながら…
脱衣場でドライヤーを探す…
と――――…洗面所の腋に…
岳心さんが使ったと思われる…
髭そり用のカミソリを見つけた――――――…
“髭を剃る習慣がない”
なんて――――…
嘘ばっかり……
自暴自棄の…俺が――――…
何を仕出かすか解らない事を考慮しての……
カミソリ避難だろう――――…
だんだん…あの人の…嫌味の裏側が…
解ってきた―――…かも…
不器用な人…なのか?
