
触れたくない。
第2章 二
「何を考えている?」
「え?」
と。昔のことを思い出していると、七瀬さんが私の髪をくるくると弄びながら、不思議そうに私を見ていた。
しかし、初めの馴れ初めを思い出していたなんてことは言えず口を噤んでいると、
「まあいいけれど。それより、久しく君を抱いていない」
「なっ?!」
爆弾発言を彼が言うものだから、昔の思い出は一気に吹き飛んだ。
いや、いや。吹き飛んだ。というよりも。
「だから、今日は君を抱く事にしよう」
一言一句間違えることなくあの時と同じ言葉を言うもんだから、デジャヴを感じるしかなかったのだ。
「啼いてくれよ」
「っ」
あの時もこうやって惑わされて、
何も反論できぬまま、彼の気まぐれで抱かれたのだ。
