
触れたくない。
第3章 三
「待って、待って…、ちょっと頭の整理をさせてくれない…?」
「ごめん無理。もう着いたって連絡してる」
「は?!」
そんなの絶対断れないじゃない…!!
頭を抱えながら横に立つ彼を見上げれば、フッと鼻で笑われる始末。
こいつ、絶対策士だ…。
「まあでも、婚約者って言っても表向きだけだし」
「?も、もっと詳しくお願い」
「それは後で。いいから、お前は俺に合わせてればいい」
「え、え…!!」
と。門の前で固まっていた私を、カケイが強引に引っ張って門をくぐる。
「頼むから上手くっやってくれよ」
「、!」
そして広い庭にでると、突然距離がグッと近づいて、そっと肩を抱かれた。
まるで大事な恋人にするようなその仕草に、思わずドキリとする。
七瀬さんにもされたことのないその行為。
彼よりも逞しい体と、爽やかな香水の香りに、キュウッと胸が締め付けられる。
「…」
そんな私をカケイが見ていることも知らず、とうとう玄関まで来てしまった。
